在家得度をした者は、仏の教えを生きるための指針とし、仏教に則った生活態度で社会生活を営むことになります。剃髪(ていはつ:髪をすべてそり落とすこと)して袈裟(けさ)をまとい寺に住む出家得度者とは違い、在家得度者は有髪のまま家に留まり、家庭を持ち仕事に従事します。今回は在家得度についてご紹介します。
古来、仏教教団を構成する人々は、次の四つのグループに分けられます。第一は、男性の出家者(比丘:びく)で構成されたグループです。第二は、女性の出家者(比丘尼:びくに)、第三は、在家の男性信者(優婆塞:うばそく)、そして第四は、在家の女性信者(優婆夷:うばい)です。これら四つのグループを総称して「四衆:ししゅ」といいます。仏教教団はこの四衆によって構成され支えられています。釈尊の存命時は、四衆は一律に仏弟子として尊ばれていました。優婆塞と優婆夷は、主に比丘と比丘尼の衣食住を支える役割を担いましたが、中には非常に智慧の勝れた人々もおり、出家者に先んじて覚りを開く者もありました。一概に四衆を優劣で語ることはできません。さて、この四衆のうち、優婆塞と優婆夷になることが、いわゆる在家得度です。
大乗仏教を奉ずる正雲寺では、在家得度を望む者に対して、儀式(授戒会:じゅかいえ)を開き、その中で十六条の戒〔仏教信者が守るべき行動規範〕と法名を授けています。また、この授戒会に先立ち、過去に犯した罪について告白し懺悔(さんげ)をします。戒と法名を授かった後は、仏弟子ならびに正雲寺門弟の自覚をもって生涯にわたり仏道修行に努力精進することになります。十六条の戒は以下の通りです。
- 私は仏に帰依します。
- 私は法に帰依します。
- 私は僧(教団)に帰依します。
- 私は清らかな心を持ち、悪い行いをしません。
- 私は清らかな心を持ち、善い行いをします。
- 私は清らかな心を持ち、人のために尽くします。
- 私は命あるものをことさらに殺しません。
- 私は人のものを盗みません。
- 私は道に反する愛欲を持ちません。
- 私は嘘を言いません。
- 私は酒を飲みません。
- 私は人の過ちを責めません。
- 私は自慢したり人の悪口を言いません。
- 私は物でも心でも惜しまず人に施します。
- 私は怒りません。
- 私は三宝を謗りません。
授戒会では、この十六条戒を守ることを仏と師僧の前で誓います。1から3は、仏法僧(ぶっぽうそう〔仏:釈尊 法:釈尊の説く教え 僧:その教えを奉ずる教団〕)の三宝(さんぼう)に帰依することです。この三宝帰依を土台にして後の十三条戒があります。特に重要な戒は7です。これを不殺生戒(ふせっしょうかい)といいます。仏弟子は命あるものを殺してはいけません。しかし現実には、私たちは食事のために殺された肉を食べ、外を歩けば小さな虫を踏み殺し、蚊やハエを害虫として殺します。すでに戒を破っているのです。私たちにできることは、その罪深さを常に自覚することです。そして細心の注意を払いながら殺生を最小限にとどめ、それ以上の罪を犯さないことです。「ことさら」とあるのはそのためです。意味もなく、また楽しみのために殺してはいけません。授戒した後、日々の生活においては、以下の三つを修行の要とします。
- 心と言葉と行いの三つにおいて十六条戒を破らないように注意する。
- 仏の智慧を学ぶ。
- 坐禅によって仏の智慧を黙想する。
正雲寺では、在家得度を望む方に授戒会を執り行っております。随時ご相談ください。
住職代理 無聖(むしょう)