
本日は私の趣味のお話です。何かの学びになるようなお話ではありませんので、気楽にお付き合いくださいませ。
お寺には写経(しゃきょう)というものがあります。漢文のお経を筆で書き写すものです。身近な写経と言えば『般若心経』ですね。ご経験のある方もいらっしゃるでしょう。写経の目的は、願い事を成就させるためであったり、心を落ち着かせるためであったり、またはご供養のためであったりします。しかし、ここで言う私の趣味の書写(しょしゃ)は、これらの目的とは異なり、単に私個人の喜びや楽しみに限定したものです。
書写にルールはありません。お気に入りの筆記具で好きな文章を書き写します。趣味の世界ですから、多少のこだわりがあるほうが面白いかもしれません。私のこだわりは、使い慣れた万年筆を使って縦書きノートにお経の現代語訳を書写することです。経机に正座ではなく、こたつにあぐらで書きます。5分でも10分でも気が向いたときに楽な気持ちで書いています。以前は本を見ながらでしたが、近年は老眼のため活字が見えづらくなってしまいました。そんな私の強い味方は、iPadとキンドルです。キンドルなら活字を自由に拡大して楽に見ることができます。
文章は小説でも良かったのですが、私はお経の現代語訳を選びました。今は『法華経』です。やはり仏教が好きなんですね。勉強なんていう意識はありません。ただ書くことを楽しんでいるだけです。もしこれで仏教への理解が深まるなら嬉しいですが、あまり欲を出さないようにしています。さらにこだわる方なら、万年筆や紙やインクにこだわって楽しむのでしょう。それも楽しい世界ですね。しかし私はそこまではありません。大学入学の時に贈られた万年筆を使っています。万年筆は他の筆記具とは違い、あまり筆圧をかけずに滑らかに筆記できます。その独特の書き心地がある種の快感をもたらします。時々『法華経』と万年筆とどちらが主役なのか分からなくなるほどです。趣味ですからそれも許されるでしょう。
漢文のお経を正座して写経するのと現代語訳のお経をあぐらをかいて書写するのとは、いったい何が違うでしょうか。実のところ、私もよく分からないのです。これはこれで「面白い」と思います。たまにはキーボードから離れて、ゆっくりと日本語を手書きするのも味わいがあって良いものです。皆様もぜひ。
住職代理 無聖